俳句を詠む、俳句を味わう喜びを一冊に閉じ込めた、 俳句甲子園世代の旗手の初エッセイ集
恋の代わりに一句を得たあのとき、私は俳句という蔦にからめとられた。 幼い息子の声、母乳の色、コンビニのおでん、蜜柑、家族、故郷……日常の会話や風景が、かけがえのない顔をして光り出す。
正岡子規を生んだ〈俳句の聖地〉、愛媛県松山市に生まれ、高校時代に俳句甲子園をきっかけに俳人となった神野さん。 NHK-BS「俳句王国」司会などマスメディアでも活躍する才媛が、明晰にして情緒あふれる筆致で俳句の魅力に迫る珠玉のエッセイ集。
人は変わらないけど、季節は変わる。言われてみればそうかもしれない、と頷く。 定点としての私たちが、移ろいゆく季節に触れて、その接点に小さな感動が生まれる。過ぎ去る刻をなつかしみ、眼前の光景に驚き、訪れる未来を心待ちにする。 その心の揺れが、たとえば俳句のかたちをとって言葉になるとき、世界は素晴らしいと抱きしめたくなる。生きて、新しい何かが見たいと思う。 季節はめぐる。つられて、私も歩き出す。一歩、一歩。俳句と一緒に。 (「あとがき」より)
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