新しいみすゞ像と名詩60作を徹底解説!
◆本書より 金子みすゞの詩というと、優しくて可愛らしい作風を連想します。しかし残された五百余編は幅広いテーマを含み、意欲的に創作されたものです。一人で生まれ、一人で死んでいく人間の根源的な孤独、子ども心のあどけなさと寂しさ、小さな命の愛しさ、宇宙の成り立ち、さらに童謡詩の範疇(はんちゅう)を超えて、女性の生き方にも筆を広げています。これらの詩は、みすゞの人生の哀歓とも関わっているのです。
◆内容 金子みすゞの希望と挫折の生涯、大正デモクラシーの理想から生まれた童謡詩の盛衰をたどりながら、珠玉の名詩60編を文学の視点から読解する新しいみすゞ論。 NHK「100分de名著 金子みすゞ詩集」で指南役を務めた著者が、番組テキストに大幅に加筆。図版写真97点、実弟の日記を収載の決定版。心に響く暖かな言葉の王国へいざなう。
◆金子みすゞ(かねこ・みすず) 詩人。本名テル。1903(明治36)年、山口県生まれ。下関の書店員だった20歳で詩作を始め、雑誌「童話」「赤い鳥」に投稿。詩人の西條八十に絶賛されるも、生前に詩集はなく、1930(昭和5)年に自死。代表作「私と小鳥と鈴と」「大漁」「蜂と神さま」「こだまでしょうか」。小さな命への愛、人間の孤独と希望、女性の生き方、都市と田園の心象風景、宇宙への洞察を、豊かな想像力、巧みな比喩、自然界への哲学的思索で描く。
◆目次 まえがき 序章 聖女から詩人へ 第1章 詩心の原風景 〜 童謡詩の誕生 第2章 視点の逆転、想像の飛躍 〜 投稿詩人の誕生 第3章 詩の国の王様 〜 金子みすゞ傑作選 第4章 「童話」の投稿仲間 〜 島田忠夫、佐藤よしみ、渡邊増三 第5章 みすゞの結婚、童謡詩の衰退 第6章 みすゞの死、西條八十の哀悼 間奏曲 みすゞが敬愛した西條八十の小曲 第7章 戦争と軍国童謡 第8章 心にこだまする言葉 〜 童謡とみすゞの復活 付録 ・『金子みすゞと詩の王国』註釈 ・金子みすゞ作品の初出誌リスト ・雑誌「童話」推薦作一覧 ・金子みすゞと童謡詩 関連年表 あとがき ◆松本侑子(まつもと・ゆうこ) 作家・翻訳家。『巨食症の明けない夜明け』すばる文学賞。『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』新田次郎文学賞。訳書に日本初の全文訳・訳註付『赤毛のアン』シリーズ(文春文庫)。著書に、金子みすゞの弟で脚本家の上山雅輔(かみやまがすけ)の日記から判明した新事実に基づいた伝記小説『みすゞと雅輔』。NHK「100分de名著 金子みすゞ詩集」に指南役として出演。
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