女性兵士は男女平等の象徴か? 戦争や軍隊は、どのような男性や女性によって担われ、 いかなる加害/被害関係を生起させているのか。 既存のジェンダー秩序を自明のものとすることなく、批判的に検証する。
21世紀に入り、世界中の軍隊で、女性兵士は数を増し、 その役割を拡大させつづけている。 しかし、この現象を単純な男女平等の進展と解するべきではないこと、 フェミニズムにとって女性兵士は難問として存在するのであり、 さまざまな立場がありうることは言うまでもない。
本書では、この20余年のあいだに起こったさまざまな変化を踏まえつつ、 女性兵士が果たすことを求められてきた役割とその効果に着目し、検証していく。
本書を貫く主張の一つは、戦争・軍隊を批判的に解剖するにあたって、 「ジェンダーから問う」という視角が不可欠である、ということである。 男らしさや女らしさといった観念の操作は、軍事化を推し進め、戦争を首尾よく遂行する際の要である。 一方で、軍隊も戦争も、女性たちに依拠することを必ず必要としており、 彼女たちの経験から現象を見つめることは、その男性中心性を明らかにするうえで 欠かすことのできない作業である。
本書は、「ジェンダーから問う」ことが、戦争・軍隊を批判的に考察するうえでいかに重要なのか、 この視点を有することで見えてくる風景を描くことにより示していく。
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