本書は、自由国民社から刊行されている「国家試験受験のためのよくわかる」シリーズ(以下、「よくわかる」シリーズ)の1冊として書かれた判例集です。 「よくわかる」シリーズは、判例についても、ポイントを押さえたわかりやすい記述がなされています。ただ、1科目1冊という分量的な制約があるため、判例をより深く学ぼうと思ったら、「よくわかる」シリーズに出てくる判例を中心にまとめた判例集があると便利です。そこで、「よくわかる」シリーズ共通の判例集として生まれたのが本書です。 本書は、判例を学ぼうと思っているすべての人を読者として想定しています。また、これが本書の一番の特長ですが、数は多くなくても(といっても、各科目数十件あります)、1つ1つの判例をじっくりと読むという使い方を想定しています。試験合格に必要な判例の知識は、判例付き六法等に掲載されている判決要旨(判決文のエッセンスを数十字にまとめたもの)を覚えることで十分得られる、と考える人も多いと思います。この考えは、間違っていませんが、実際の事件の概要を知り、それに対する判決の原文を読む、多少は時間がかかっても、このようなプロセスを経た方が判例への興味もわき、判例の知識も頭に定着しやすくなると思います。「急がば、回れ」です。 本書のタイトルは、「よくわかる判例」ですが、「さっと読めて、あっという間に判例の知識が身につく」という魔法のような本ではありません。本書の大半を占めているのは、一文が長く、「けだし」とか「所論は」といったおよそ日常生活ではお目にかかることのない言葉が出てくる判決文です。無理をせず、少しずつ読んでみてください。本書を読むにつれて、判決文を読むことも、判決要旨の暗記も苦にならなくなっていくはずです。 (「はじめに」より抜粋)
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