長年にわたり世界の歴史学を牽引してきた著者の現在を伝える日本語版オリジナル編集の7篇。16世紀イタリア、フリウリ地方の一粉挽屋に焦点を絞り、徹底した資料読解と独自の方法論から当時の世界とわれわれの関係を炙り出した『チーズとうじ虫』はじめ、数々のミクロストリアと事例研究をとおして歴史家の課題に挑んできた著者の仕事は、この10年のあいだに発表された本書収録の「緯度、奴隷、聖書――ミクロストリアの一実験」「世界を地方化する――ヨーロッパ人、インド人、ユダヤ人(1704年)」「わたしたちの言葉と彼らの言葉――歴史家の仕事の現在にかんする省察」「ヴァールブルクの鋏」「内なる対話――悪魔の代言人としてのユダヤ人」「ミクロストリアと世界史」「無意志的な啓示――歴史を逆なでしながら読む」の各編でますます磨きがかかっている。さまざまな観点から「歴史とは何か」を考える書でもある。
「ほとんど無名に近い個人でも、はるかに大規模な現象にかんする省察への道を拓くことがありうる。〈ミクロストリアと世界史〉は、互いに両立不可能であるどころか、相手を強化しあうのだ」
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