魂から生まれる言葉 谷川俊太郎
「樹」と題された詩の始まりを読んだとき、あれ?こんなの変だと思った人もいるかもしれません。「樹はすべてを知っている/樹は何も知らない」普通の文ではこんな真逆なことは書きませんよね。でも詩ではこういう矛盾した言葉が読者の脳を刺激し、今まで気づかなかったより深い現実に目覚めさせることがあります。そのためにはこれまで教わってきたこと、知っていることをいったん白紙に戻してみることが必要です。 「なんにもないということが/そこにあるということだ」詩は時にマジックです。だまされることで世界の見方が変わってきます。そこに新しい真実があるということを信じて、詩人は書くのです。大迫さんの詩は魂から生まれてきます。詩は人間の理性、知性、感性が創るものですが、大迫さんの詩はそれらよりももっと深い、それ故に時に理解が難しい魂から生まれてきます。 大迫さんの言う〈あなた〉は人間のあなたと同時に人間を超えた存在に向けられています。それを簡単に〈神〉という言葉で呼んでしまわないところにも、詩を書く大迫さんの魂のありかを感じます。
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