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『あらしの前』から6年がたち,戦争は終わりました.ドイツ軍がオランダを占領している間,オールト家の子どもたちもつらい毎日をすごしましたが,深い心の傷を乗り越え,新たな出発をするために,とまどいながらも前に進みはじめます.すると,少しずつ希望の光がさし,道がひらかれていくのでした.[解説・斎藤惇夫]
「あらしの前」の続編です。あらし(第二次世界大戦)が終わったあとのオルト家の様子が語られます。
「前」のお話の時から数年たって、子どもたちの成長が著しいのには、驚くばかりです。
いたずらっこだったピムは色々なことを感じ、考える少年に。子どもらしい真面目さと一途さを備えていたルトは、しとやかな少女になっていました。今回は、ビムの代わりに、長女ミープの息子、ロビーがやんちゃぶりと愛らしさをふりまきます。そしてアメリカに渡ったユダヤ人の少年が、無事に青年になり、訪ねてきてくれたのは、なんと嬉しいことでしょう!
食料を初め、何もかもが足りない日々ですが、物資面だけでなく、実は精神面での回復も必要でした。人の心は、まだささくれだっています。そして、なんでも戦争のせいにして言い訳をする子どもたちにお母さんは言いました。
「・・それは戦争のせいではなくて、わたしたちがするからするのです。そのときどきに、何かわけがあってするので、戦争のせいじゃありません・・」
落ち着くにはまだ時間がかかりそうですが、オルト家の人々はあらしの前と同じく、家族同士、そして隣人と温かい関係を育みながら乗り越えていきます。
「せんそうってものはおそろしいもんですよ」バスにのりあわせたおばあさんの言葉です。どの国の人も皆、そう思っているのです。この素朴な言葉を、忘れてはいけないと思いました。 (なみ@えほんさん 50代・ママ )
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