三千年前に中国で生まれたといわれる囲碁を、いまのようなかたちに進化させたのは、江戸時代の日本人だった。 徳川家康は碁を好み、当代有数の打ち手に扶持を与え、碁に精進するよう命じた。 やがて、四つの家元が生まれる。 各家元の目標は、名人を一門から生み出すこと。そのために全国から天才少年を集め、ひたすら修行をさせた。 だが、名人は、同時代のあらゆる打ち手を凌駕するほどの力を持つ者しかなれず、 江戸時代の二百六十年間に誕生した名人はわずか八人であった。
「古今無双の最強の名人になる」――江戸時代後期、そんな破天荒な夢を持ち、ひたすら努力を続ける少年がいた。 その少年こそ、文化文政から幕末にかけて当時の碁打ちたちを恐れさせた一代の風雲児「幻庵因碩」である。 少年に天賦の才を見出し、夢の実現を託す義父の服部因淑。少年とともに闘いながら成長していく、本因坊丈和。 そして、綺羅星の如くあらわれた俊秀たち。 彼らは、碁界最高権威「名人碁所」の座をめぐって、盤上で、時には盤外で権謀術数を駆使しながら、命懸けの激しい勝負を繰り広げた。
『永遠の0』、『海賊とよばれた男』に続く、興奮を呼ぶ本格歴史小説。
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