山また山の山奥の、そのまた奥の小さな沼。そこでグウグウお昼寝中なのは、おおきな体の竜! その竜は、地球で最後の一匹でした。死んでしまったママのことを想って泣き、沼につかってぼんやりと空をながめながら、毎日を過ごしています。
ある日、そんな竜のもとをちいさな人間の女の子が訪ねてきます。ひどく急いでいるらしいその子は、すごくいばりくさっていて、なんだか意地悪。きっと、サーカスか動物園にでも売り飛ばすつもりなんだと怯える竜に、彼女はおどろくべき事実を伝えます。
なんと、もうすぐおおきな彗星が落ちてきて、地球が滅亡するというのです!
地球滅亡を回避するために、なにもかもを犠牲にする覚悟で竜を訪ねた天才少女。そして、家族を失った悲しみに暮れ、竜としてのほこりをなくした地球最後の竜。そんなふたりの交流と挑戦を描いた、冒険ファンタジーです。
沼でのんびりお昼寝をしながら、そこに住むナマズにさえバカにされるという、あまりにも竜らしくない竜。地球最後という、なんだか物々しい呼び名のわりには、ずいぶん愛らしいキャラクターだなあとおかしく思っていると、すぐさまもっと性格のトガった少女が登場して、あっという間に物語に引き込まれてしまいました。
少女のお父さんは世界一の天文学者で、お母さんは宇宙飛行士。おばあちゃんはコンピューター開発の権威だし、おじいちゃんは世界屈指の生物学者。な、なんて濃い血筋でしょう……。そして少女自身も、血筋に負けない天才ぐあい! いばりんぼうなのが、玉にキズですが。
そんな個性の強いふたりがそれぞれ胸の内に秘める痛みと向き合いながら成長していくようすは、物語のスケールのおおきさと相まって、お腹の底から力があふれてくるような、パワフルなエネルギーに満ちています!
さて、彗星の衝突までもう時間がありません。最後の希望は、天の星を飲み込んだという竜の伝説! まともにとりあってくれない大人たちを見かぎり、たったひとりで竜を探し出した少女は、最後の竜にこう言いました。
「今度は、あなたの番よ」
ところがそのアイデアには、おおきすぎる問題がひとつ残っていました。
「ダメだよ。悪いけど。ぼく、飛ばない……飛べないから」
最後の竜は、空を飛ぶことができなかったのです。地球滅亡まで、あと七日──
(堀井拓馬 小説家)
できそこないの竜、地球を救う!?
「あなた、飛べるわよね?」 山奥の小さな沼でのんびり昼寝をしていたぼくをたたき起こしたのは、奇妙なかっこうをした人間の女の子だった。 星を飲みこんだ竜伝説を信じて竜を探しに来たというけれど、ぼくは飛べない、できそこないの竜なんだ・・・・・・。
児童文学賞トリプル受賞作家・今井恭子が綴る、彗星衝突のピンチに立ち向かう冒険と友情の物語。 ファンタジー装画の名手・佐竹美保による挿絵もたっぷり収録。
【編集担当からのおすすめ情報】 やさしくて気弱な竜の子どもと、かしこくて強気な少女のコンビが繰り広げる、壮大な地球防衛作戦。 佐竹美保氏の竜イラストも見ごたえたっぷりです!
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