生涯、膨大な数の短編を遺した山本周五郎。 没後五十年を経た今なお、読み継がれる作品群の中から、選びに選ばれた名品。短編選集決定版の最終巻(全四巻)
江戸っ子の老人の意地が生み出してしまう孫娘のかなしみ「野分」。 子供を持てない夫婦の行き場のないかなしみ「並木河岸」。 かなしみが新しい人間の関係を生み出す不思議「夕靄の中」。 かなしみを抱いた男と女の最後の救い「つゆのひぬま」。 岡場所の女の消えそうで消えないかなしみ「将監さまの細みち」。
ほかに、「墨丸」「深川安楽亭」「ひとごろし」「桑の木物語」など、全九編。
周五郎は、悲哀を悲哀として描きながら、その悲哀を乗り越える人々の姿を貴いものとして描いている。
巻末に編者・沢木耕太郎氏による解説エッセイ「悲と哀のあいだ」を収録。
|