大学に身を置く人間には3つの重要な役割がある。 その1は言うまでもなく研究者としての役割である。大学院時代から、というよりも学部生の頃から政治学の面白さに惹かれ本格的な研究に憧れを抱いていたが、まさに「みちくさ」を食みながら学部卒業後5年にしてようやく大学院に進学して研究のほんのまねごとをするようになった。大学人とはこのように自らの意思で、まさに生涯をかけて自分の好きな研究に取り組む人間なのであろう。 第2は教師としての役割である。もしすべての研究者が自らの関心の趣くままに自身の研究にのみ専念していたら、大学は成り立たないだろう。研究者にはもう1つ、教師としての役割があることを忘れてはならない。長年にわたる自身の研究を通じて蓄積された知識や叡智は後世代に引き継がれなければならないし、後世代を育て上げることは研究者の責任でもある。 専任教員として大学に身を置いている者は、より良い大学を実現するために、大学の管理・運営にも責任を持つ必要がある。研究者として、あるいは教師として真摯にその役割を遂行しようとするならば当然、より良い研究環境やより良い学習環境の実現を求めるであろう。そのためには、やはり様々な形で大学の管理・運営に参加、協力し、理想の大学に1歩でも近づける努力を惜しんではならない。これが大学人の第3の役割である。 本書は、上述した大学人のこれら3つの役割に言及し、実際の著者が辿った大学生活を、研究・教育・大学の管理運営に即して分類整理し、著者を通して大学とは何か、研究者とは何かを探る。
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