昭和30年代から50、60年代にかけての県内の鉄道は、変革が一気に進みます。列車は蒸気機関車が牽引する客車・貨車から気動車(ディーゼルカー)、電車へ。最も難所といわれた横川―軽井沢間は明治末期には日本で初めて幹線電化された区間ですが、歯車を噛ませて急勾配を上るアプト式は昭和38年に廃止され、強力な電気機関車だけで上り下りする粘着運転に。さらに気動車や電車も、より高速で快適な特急車両が登場。大都市や県内各地を結んでさまざまな列車が駆け抜け、人や荷物を運びました。 本書は、信越本線、篠ノ井線、中央西線、長野電鉄などを中心に、この年代に県内の鉄道を走った列車たちの記録です。収録枚数なんと約370枚。列車は、今では考えられないような長大な編成で、坂を上り、トンネルを抜け、橋を渡り、豪雪の中を突き進みます。 アプト時代の碓氷峠を行き交うED42。木曽谷や姨捨の勾配、野辺山高原を行くD51、C56に代表される蒸気機関車。ポスト蒸気を支えたキハ58系、キハ81系などの気動車。颯爽と登場した189系、381系などの電車特急……と、鉄道史を飾る珠玉の列車の数々。列車愛称も「軽井沢」「赤倉」「白鳥」「すわ」「野沢」「志賀」「白山」など、懐かしい名前が多数登場します。撮影時期の順に並ぶ写真を見れば、蒸気、気動車、電車が混沌としながら、時代の輸送を支えてきた様子が分かります。 著者の小西純一さん(信州大名誉教授)は、鉄道友の会会員として趣味で撮影を続けた一方、交通構造物の専門家としても鉄道に関わり続けてきました。そのため、機関区や駅構内、試運転・試乗会などで撮影した貴重な場面が多いのも本書の特徴です。
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