2週間の集中講座で、知識も経験もゼロの学生たちが、世界のどこにもない折りたたみ椅子を作り上げる―折りたたみ家具のエキスパートである著者が指導するきわめて難易度の高いこの講座に、毎年多くの学生が受講を希望してくる。 求められるのは、造形としての斬新さだけではない。どんな仕組みで開閉・収納し、実際に座れる椅子として成立させられるか。構造の創造性こそが問われるのが「折りたたみ椅子」というテーマだ。しかも前例のない新作を生み出すとなれば、数々の難題が立ちはだかる。中国最難関の芸術大学、中央美術学院のエリート学生たちといえど、全く未経験の家具制作では、何度も壁に突き当たり、行き詰まり、試行錯誤を繰り返すのだ。そうした課題をどうやってクリアしていくか。
著者は、昨今耳目を集めている「デザイン思考」の方法論をプロダクトデザイン教育の現場に適用した「泉流デザイン思考」を提案し、学生たちに伝授する。歴史的理解とリサーチ、大量閲読の重要性などアイデア創出のための指導から、模型、3Dモデル検証、現物制作、そして作品によっては商品化まで、カリキュラムとその理論はもちろんのこと、豊富な範例によって学生たちがゼロから作品を作り出すリアルなプロセスを紹介。プロダクトデザインの方法論であると同時に、それをどう教えるか、創意をどう育てるか、デザイン教育の実践例となる一冊。
■目次 序章 デザイン思考 1 デザインの定義 2 デザイン思考とは 3 有形――無形のデザイン 4 教育現場から考える実戦型デザイン思考
第1章 オリジナルアイデアを生み出す Step1 過去を学ぶ Step2 構造を学ぶ Step3 名作椅子の模型製作 Step4 現行モデルをリニュアールする キャンパス風景
第2章 アイデアを形にする 1 観察力の訓練 2 リサーチ 3 シンセシス――統合 4 奇想天外と立体思考 Step5 スケッチ Step6 模型制作 Step7 実物大作品で検証する Step8 作品発表 範例 優れた学生作品 第3章 ビジネスにつなげる 1 作品を商品にする試み 2 商品化への制作 3 展示会出展 4 流通にかける 範例 学生作品から生まれた製品
第4章 ビジネスでのプログラム実践例 1 デザイン教育とビジネスシーン 範例 ビジネスでの実践例
対談 島崎 信氏に訊く 社会の中のデザイン教育
終章 結びにかえて 1 継承と進化 2 アイデア創出のための訓練法の提言 3 デザインの教育
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