有機農業と慣行農業による「土の良しあし」「農産物の品質(栄養・安全性)」「環境への影響」など、 消費者が抱くステレオタイプの「思い込み」や垣根をつくって分断する風潮に対し、科学的な根拠をもって、その間違いを一つずつ丁寧に解き明かす。 堆肥も化学肥料も農薬も、その利用目的は作物をよりよく生育させ、高品質で収穫量を増やすことにある。 問題は使用方法。有機農業でも堆肥を必要以上に与えれば、作物の品質や土、地下水、大気などに悪影響を及ぼす。 健全な作物や土をつくるうえで、有機も慣行もどちらも大切な農業である。
【目次】 1章 そのお話は思い込み? 堆肥をまかなきゃ土はできない? 食への多様なこだわり 健康な土、健康な食べもの、健康な体 食べものへの思い込みはどこから来る?
2章 作物の養分とその吸収・利用―有機農業と慣行農業、何かちがうのか 作物も養分なしでは生きていけない 植物の養分とは何かを探し求めた歴史 土の生き物が有機物を植物の養分に変える 植物の養分は何か?――必須養分の探求 養分が植物の根から吸収される形態 養分イオンを土が保持するしくみ 植物が根から水や養分を吸収するしくみ 養分吸収の例外的なしくみ 植物による窒素利用のしくみ―植物に必須アミノ酸はない 有機物か無機物か、養分の形態を対立的に考える必要はない
3章 食べものが生産される場としての土 原始地球に土はなかった 人が土を管理し、農地を守る 土の肥沃度はどう維持されてきたのか―田んぼと畑の比較 土は誰のものでもない社会の共有財産である [コラム]農作物に込められた労力と手間―コメを例に
4章 農業を有機農業と慣行農業に分断しない 有機農業とはどんな農業か 有機農業は慣行農業より優れているか―研究のメタ分析による評価 有機農産物の品質が慣行農産物とちがう特徴を持つのははぜか 有機農業が生物の多様性を豊かに保全するということの意味 有機農産物の付加価値を社会事業に発展させたNPOの事例から学ぶ
5章 有機農業と慣行農業―それぞれの養分源の弱点 有機農業の養分源・堆肥の弱点 慣行農業の養分源・化学肥料の弱点 原料を輸入に頼るわが国の化学肥料生産の弱点 堆肥や化学肥料の弱点を補強する基本―養分循環型農業
6章 誰もが安心して食べていくために 有機農業へのこだわりと農業の多様性 フェアトレードの精神―有機農業を支援するために 国民の誰もが安心して食べられる社会をつくるのは国の役割 慣行農産物の適正価格―「安ければよい」のか 食品ロスと食生活―食べものへの倫理観
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