19世紀から20世紀にかけては、増幅するスペクタクルのなかで「憧れ」の経済価値が高まり、「憧れ」の形を戦略的に操作した時代である。この「憧れ」の構築する近代に、女性たち、とくに既存の価値観を乗り越えようとする「新しい女性」たちはどうかかわったのだろうか。本書は、国内・海外の研究者たちが共同で、「憧れ」とジェンダーを軸に歴史を読み解く。
「憧れ」とは理想とする物事や人物に強く心惹かれる感情を指すが、日本語の語源「あくがる」は、本来いる場所を離れてさまようことを意味し、ここから物事に心を奪われうわの空になる状態を示す言葉へと変わっていった。個々人の感情としての「憧れ」は、欲望、反発、打算、幻滅、嫌悪等、さまざまな感情を誘発する。近代に顕著な発達をみた教育、商業、広告業、メディアは、「憧れ」を育てあるいは制御する手段でもあり、人びとの「憧れ」をどう?むかがこの時代の課題であったことを示している。(本文より)
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