「輝けるアメリカ」「美しいアメリカ」を掲げ当選した大統領ひきいるアメリカが、突然出現した「壁」によって外の世界と遮断される! 1977年に発表された表題作「アメリカの壁」が「現在のトランプ政権の誕生を予言していた」と40年の歳月を超えて話題沸騰、電子書籍として発売されるや、各電子書店のベストセラー・ランキングで1位を獲得、国内外のメディアで大きく取り上げられた。この注目作品に加え、「眠りと旅と夢」「鳩啼時計」「幽霊屋敷」「おれの死体を探せ」「ハイネックの女」の六篇を収録した短編集を、新装版として緊急出版する。SFが“未来を見通す文学”であるならば、「国境に壁を築く」というトランプ大統領の台詞を先取りしたこの題名は、まさに「SF界の巨匠」の面目躍如たるものがある。 ベトナム戦争が終わってからこのかた、アメリカ人が急速に「内向き」になっている時代。独立記念日の直前、アメリカから外界への、すべての交通機関、通信手段が突然、途絶する。ビジネスで日本から来ていた主人公は困惑し動転するが、アメリカ人の友人は「こんなことが起こるような気がしていた」と不可解な態度。そして何事もないかの如く独立記念日の式典は華やかに進む。アメリカが不可思議な壁で覆われてしまっても、なぜ「アメリカ市民」たちは平静でいられるのか。「アメリカの壁」を生んだのはあの大統領」なのか・・・? 奇想天外な「SF」という形式で、巨匠・小松左京は、超大国アメリカの本音を鋭く抉り出す。
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