学校からの帰り道に見つけた、しましまのねこ。のらねこなのかな? それともすてねこ? ぼくが近づいてもねこは逃げない。何度もなでさせてくれる。「つれてかえりたいな。ぼくのねこになってくれたらいいな。」そう思っていると雨が降ってきて、ぼくは家にねこをつれて帰った。 うちで飼いたいとお母さんに言うと、「すてねこなら、かってもいいけど」と言っておかあさんは近所にねこに心当たりがないか聞きに言った。でも知っている人はだれもいなかった。ぼくはねこに「ポー」という名前をつけて、かわいがろうと思った。
ぼくのクラスに森あつしくんという転校生がやって来た。席が近くなって、ぼくは森くんを気にかけて、たわいもないことを話したり、笑い合ったりして仲良くなった。けれども帰り道に森くんが、引っ越してきた日の夜に飼っていたねこがいなくなってしまったとつらそうな顔をして言った。ぼくはそれがどんなねこなのか、それ以上聞きたくなかった。
ひもにじゃれて楽しそうに遊ぶ「ポー」、ぐるぐるとのどを鳴らす「ポー」、毛がとってもすべすべしている「ポー」。こんなに可愛いのに、森くんがさがしているねこじゃないよね。「ポー」が森くんのねこでないことを願いながらも、頭をかけめぐる、もしかしたらの思い。森くんから逃げれば逃げるほど、ぼくの気持ちは追い詰められていきます。一度気持ちが通ってしまった大切な存在と離れなければいけないかもしれない……と思うことはなんてつらいことなのでしょう。そんなぼくの心の機微を岩瀬成子さんが丁寧にしっかりと描き出します。
松成真理子さんが描く、毛並みがすべすべで柔らかそうな「ポー」の姿がとっても愛らしく、ぼくをまっすぐに見つめる「ポー」の目も印象的です。そのまっすぐな目にぼくは何を思ったのでしょうか。
小学1、2年生からおすすめの、さまざまな感情と出会える幼年童話です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
放課後クラブが終わった学校からの帰り道。白い家の近くでねこを見つけた。つれて帰りたいなと思ったけれど、お母さんは「だめ」っていうかもしれない。 そのとき、ぽつっとぼくの首に雨があたった。雨がふりだしたら、ねこがびしょぬれになってしまうと思って、家につれて帰った。お母さんは「すてねこなら飼ってもいいけど」といって、ねこに心当たりがないか白い家の近くにたずねにいった。でも、誰もねこのことは知らなかった。ぼくは、ねこに「ポー」という名前をつけた。 ぼくのクラスに森あつしくんという子が転校してきた。森くんと仲良くなって話していると、「家族は両親と妹と、それからねこ」といった。そして森くんは、「だけど、ねこがね、いなくなっちゃったんだよ」とつらそうな顔をした。ぼくはなんだかむねが急にドキドキしはじめた。「しんぱいだね」といったけど、どんなねこ? とは聞かなかった。どんなねこか、知りたくなかった……。 少年の心の機微を丁寧な筆致で描いた幼年童話です。
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