十八世紀後半、田沼意次の時代から寛政の改革ころ。華々しい江戸の出版業界の中心には、いつもこの男がいた! その男の名は、蔦屋重三郎。江戸の東の外れ、幕府公認の遊郭・吉原で生まれ育ち、貸本屋から商売をスタートした重三郎は、さまざまな才能に出逢いながら江戸の出版界でめきめきと頭角をあらわしてゆく――。その活躍は、編集者の枠にとどまらず、本の企画や制作、出版、広告、販売と多くの仕事を手がけ、しかも美人画の喜多川歌麿や、謎の絵師・東洲斎写楽を売り出し、狂歌の流行にもひと役買った。市井の人々が政治に参加することができなかった時代に、幕府の方針に翻弄されながらも粘り強く、そしてしたたかに、江戸の人々を楽しませることに生涯を賭けた、蔦屋重三郎の謎を秘めた生涯に迫る歴史ストーリー。
|