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コレクションを読んでから、安房直子作品を再度読み返しています。
6作品が収録されていますが、前半の作品が洋風、後半の作品が和風といえるかもしれません。
今回気になったのは表題作の「日暮れの海のものがたり」でした。
好きな人のために身を捧げるところが「人魚姫」を思わせますし、かめを追い払うために反物で針山をこさえる場面は最近読んだ昔話の「うばのかわ」を思い出しました。
「鶴の家」は死が作品の中に盛り込まれているので、怖さもあります。
こうして私たちが生きている現世というもの、長いように思える時もありますが、実際ほんのつかの間の時間なのかもしれないと読んでいて思えます。
「北風のくれたハンカチ」では、親を亡くしたくまの孤独さが伝わってきました。
孤独なだけでなく小さな喜びを見つけたくまの姿を読んで心が温かくなりました。
安房さんの作品を読むと、安房さんの作品の中にある共通性を感じることが多いです。
「小さな金の針」には、ねずみが出てきますが、針で思い出すのは「おしゃべりなカーテン」、ねずみで思い出すのは「ねずみのつくったあさごはん」です。
共通の部分はそこだけで、全く違った作品に仕上げていくのは、糸を代えることで、同じ雰囲気を持ちながら違う作品に仕上げる織物を見ているような感じすらあります。
一つのモチーフからたくみに何作品もの作品を作ることができたことが安房さんの強味だったように思えるのです。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子7歳)
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