
妹のもも子の誕生日に、お父さんが子どもたちの指紋をとると言い出しました。誘拐事件が起こったときに、早くみつけてもらうための資料にするというのです。「じゃあ、誘拐されたときに家族だけでわかる言葉をつくったら……」ぼくの提案を聞いて、家族みんなで言葉づくりがはじまりました。母さんは逆さ言葉を考えました。「でも、新聞紙は逆さから読んでも同じだよ」と兄ちゃんが反発します。「では、思っていることの反対を言えばどうだろう」とお父さんが続けました。「好き」は「嫌い」、「きれい」は「汚い」というように変えようというのです……。
家族が、自分たちだけの言葉をつくる作業を通して、一つにまとまっていきます。主人公が連発する「大きらいだぞ」の本当の意味は「大好きだぞ」ということ。家族に対して口に出して伝えにくい思いも、こうすれば簡単に伝わります。家族だけの秘密を持つことで、絆が深まることを教えてくれる物語です。

私は昔、藤本義一さんに直接、お世話になったことがあります。それだけにこの本は興味深く、読ませて頂きました。これは何よりも家族についてしっかり考えさせてくれます。この本では家族だけの秘密を持つことについて書かれていますが、それが家族にプラスになるということはとてもよくわかります。藤本義一さんは本だけでなく、様々な雑談でも人生のヒントを与えてくださったように思います。これは素晴らしいお話です。 (水口栄一さん 60代・その他の方 )
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