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オランダの片田舎、ファン・オルト一家は平和で温かな生活を送っていましたが、とつぜんナチス軍が侵入し戦争の波がおしよせます。信頼と愛情で結ばれた家庭は……。戦後児童文学の名作。(改版)
子どものころ、近くの図書館に行くと、この本がいつも目に留まりました。「前」と「後」が二冊並んでいるので目立つのです。それに、岩波の児童書はとても存在感がありました。何度も手にとり、でも、結局読まずじまいでしたが、この度、40年以上経ってやっと読みました。地味なので、よく読まれているとは思えないけれど、それにも関わらず、長い年月、図書館の本棚にずっと並んでいるなんて、すごいことです。「良い本」と認められているということは、そういうことなんですね。
オランダの田舎に住むお医者さん一家のお話です。村で頼りにされている父親と愛情深い母親、生まれたばかりの赤ちゃんから18才の長女まで全部で6人の子どもという賑やかな家族に、少しの間、預かることになったユダヤ人の少年も加わります。年少から年長までの個性ある子どもたちの言動に、微笑ましく、クスッと笑わせられたり、考えさせられたり・・。一家の日々の生活、そしてクリスマスなどの行事を過ごす様子がとても丁寧に描かれています。
そこに「あらし」(第二次世界大戦)が忍び寄ってきます。年長の子どもたちが、戦争の予感にすごく敏感に反応しているのに対し、両親は、鈍感と言っても良いくらいに、出来るだけ冷静に対応しようとしているところが印象的でした。「何か変、いつもと違う、でもきっと大丈夫」と言い聞かせているうちに、普通の日々が、非日常の世界に変わっていきました。自然界の嵐は仕方のないことですが、人間が作り出す「あらし」は、未然に人間がストップをかけられると信じたいです。 (なみ@えほんさん 50代・ママ )
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