綿毛を吹いて、たんぽぽの種を飛ばしたことは誰しもあるでしょう。飛ばされたたんぽぽの種は、どうなるのでしょうか。チューリップを越え、石の上に降りると、風に吹かれて、また高く昇ります。春の野草の上を飛び、くもの巣に引っかかりそうになりながらも、ようやく地面に着き、そこではじめて芽を出して、新しい命がめばえます。小さな命の大きな冒険を、緻密な美しい絵で描き出した、自然の神秘を感じられる絵本。
1993年の作品。
ストーリー自体はとてもシンプルで、たんぽぽの花が綿毛になって、それがまた、たんぽぽに育つという輪を描いたもの。
その流れも、とても分かり易いものです。
たんぽぽだけでなく、ノアザミ、ハルジオン、ハハコノクサ等の見かける野草も描いているので、身近に感じられるのでしょう。
ちょっと残念だったのは、少しは解説が欲しかったこと。
春の野草といった類いの解説があれば、子供との会話が、もっと弾むと思いました。
ごんもり なつこさんの絵が、春の躍動を正確に伝えているのですが、その発色の美しさは特筆ものだと思います。
また、文章もとてもリズミカルなもの。
日本の絵本って、どちらかというとテンポが悪いと思うことがあるのですが、すずき ゆりいかさんの文は、実に小気味良いものだと思います。
散歩の途中で綿毛を見つけた時に、読み聞かせするとベスト。
こうした絵本は貴重なので、復刊して欲しいものです。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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