|

恵まれたヨーロッパの国で育った少年、ラスムス。はじめて訪ねた祖国で大地震に巻き込まれ、遭難してしまう。ただ観光客として訪れたなら、決して見ることのなかった厳しい現実。自分のルーツを探す少年の冒険物語。

タイトルと表紙の絵が気になって、図書館で借りてきました。
作者はデンマークの作家で、もともとは大学教授です。犯罪防止委員会の委員長を務め、メディア社会の問題・子どもの権利なども訴えている人だそうです。
さて、このお話は、デンマークのある普通の家庭に養子としてもらわれてきた「ラムラス」という男の子に起こった物語です。
話の内容から、デンマークなどの北欧では、こうした貧しい地域(国)から子供を養子にもらう家庭がごく普通にあるようです。
ただ、そのもらわれてきた子どもたちが社会的に幸せかというと、考えてしまいます。
ラムラスの学校生活を見る限り、多かれ少なかれ差別は受けているようです。でも、ラムラスの家族はとても彼の子と愛していて、大事にしてくれています。そこが読んでいて、とてもよかった。根底にある愛情が信じられるのは素敵なことだと思いました。
家族みんなで訪れたというラスラスの生まれた国は、一体どこだったのでしょうか?
はっきり「どこ」とは書いてありませんでした。ただ、貧富の差が激しく、地元の物乞いや犯罪から守るため、外国からの観光者のホテルは鉄格子で囲まれているとい描写がありました。
そして、こういう地域から養子に出す人たちはお金が必要で、子どもの欲しい夫婦に、仲買人を通して払い養子に出すというのです。
少し前にどうしても子供ができない夫婦が、東南アジアかどこかの国の仲買を通して、養子をもらうという特集をテレビで見たことがありす。
その特番の時も、手続きだけでもいろいろ大変そうだなと、思ってみていました。
社会的にはまだまだいろいろ問題もあると思いますが、ラムラスのような子どもたちがその土地その土地で幸せに暮らせるといいな〜と、改めて思いました。
この物語は、そういったお国事情をつきつめた話ではなく、
むしろ、たまたま生まれ故郷というところに来ることができたラムラスが体験した成長物語です。
ここで出会ったたくさんの人、出来事が、ラムラスを大きく変えていく素敵な物語でした。
小学校高学年くらいから中・高生くらいのお子さんたちにお薦めします。興味のある方は是非、読んでみてください。
そして、日本という国で生まれ、多少不満があったとしても、家や家族があり、自分の自由になるおこずかいもある自分たちの生活を振り返ってみてください。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子11歳)
|