アストリッド・リンドグレーン賞受賞作家による感動作。オーストラリア児童図書賞受賞。カーネギー賞候補。部隊は第二次大戦中のチェコスロバキア。ナチスの侵攻で、チェコでもロマ族狩りがおこなわれていた。父や母、仲間とくらしていたアンドレイとトマス、赤ん坊のウィルマは、目の前で家族を殺される。「走りなさい!」という母の最後の声にしたがって、逃げ続ける幼い三人兄弟。たどりついたのは、爆撃で廃墟になった村のなかにぽつんと残っていた動物園だった。見捨てられ、死にゆく運命の兄弟と動物たちが見たものとは――。人間とは? 戦争とは? 涙をきんじえない、ずっしりと心につきささる珠玉の作。
作者はオーストラリアの作家さんでした。
でも、このお話は第2次世界大戦中のチェコスロバキアが舞台ではないかと、邦訳者の野沢佳織さんが書いています。
主人公の少年アンドレイ(兄)とトマス(弟)は“ロマ”という民族だと、作中に何度も書かれていました。
「ロマでは…」「ロマの人々は……」という綴りが、アンドレイの回想の中に度々出てきました。
“ロマ”を検索すると、北インド系の移動民族で、俗にいうジプシーたちを指すそうです。ヨーロッパでは民族的にユダヤ人と並んで迫害を受けることが多かったようです。
さて、そんな少数民族の出のアンドレイたちは、突然やってきた兵士たちに集落を荒らされ、知人や親せきを殺され、残っていた人たちは捕虜として連れて行かれてしまいます。
アンドレイと、トマスと、まだ乳飲み子だった妹のウィルマだけはかあさんの機転で、捕虜の集団から逃げ出し、ある廃墟となった小さな動物園にたどり着いたところから物語は始まります。
動物園に残されていた動物たちの回想シーンと、アンドレイたちの回想シーンとが「現在」と交差しながら進んでいく手法は、なかなか面白かったです。
カバーの挿画は河村玲さん。物語への思い入れが感じられるカバー画でした。
全部で224ページ。1つ1つのセンテンスも短く簡潔にまとめられているので、時代背景が分からなくて読みやすい内容だと思います。
この本を読むきっかけになったのは、見返し部分に書かれた本文抜粋のアンドレイたちのお母さんの台詞でした。
「走りなさい!子どもたち」
それが、母さんの最後の言葉だった。
こんなの読んでしまうと、いったいどんな物語なんだと、気になりませんか?続きはぜひ読んでみてください。
小学校高学年くらいから中高生くらいのお子さんたちにお薦めします。
ただ、思っていたより、ファンタジー要素が大きかったのはちょっとびっくりでした。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子15歳)
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