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自他共に認める歌舞伎通の作家・橋本治と画家・岡田嘉夫による「歌舞伎絵巻」シリーズ完結巻。時代物の名作が艶やかな絵本になりました。
橋本治×岡田嘉夫の「歌舞伎絵巻」の5巻目です。
ちなみにこの本のタイトルは「いもせやま おんな ていきん」と、読みます。
時代は少し遡り、時は天智天皇の時代。
他の歌舞伎よりもよりファンタジー色の強い物語になっています。
そして、こうして歌舞伎絵巻をいろいろ読んできて思ったのは、「歌舞伎」の脚本って、基本的に現代でいうところの「昼メロ」ドラマと似ていました。
なので、主軸のドラマの中に必ず恋物語が織り込まれています。
「一目会っただけで好き合う恋人同士」とか、「横恋慕してくるライバルとか」…。
そして恋愛の末にたいてい誰かが命を落とします。
死んだり呪ったり、不思議なものに変化したりするなどは日常茶飯事の用です。
このお話の大きな流れは天皇家に謀反を起こした蘇我蝦夷と入鹿親子の討伐ですが、
登場する悲恋の若い恋人同士は、この争いに巻き込まれた(もともと家同士はいがみ合っていたというので日本版の「ロミオとジュリエット」的な)
大判事清澄の一人息子「久我之助」と、定高の一人娘「雛鳥」でした。
入鹿に見初められた雛鳥は入鹿のところへ行くのを拒み自殺。
天智天皇の后を匿っていた久我之助は、無理やり自分の家来にしてやろうとしましたが、久我之助もそれを察知して自害。
このお話はその後「御内裏様とお雛様(雛人形)」になっていくようです。
けれど、物語の主人公はこの若いカップルではなく、最後に入鹿を退治した、天智天皇の味方(?)藤原鎌足の息子「藤原淡海」のようです。
どのページも毎回岡田さんの素晴らしい歌舞伎絵が楽しめます。
ほんとにどの感をとってもハチャメチャだけど面白く、歴史に基づいているところも多く壮大なラブロマンファンタジーで、
「歌舞伎」がこんなに面白いなら、今度はぜひ生で舞台も見なくちゃ」と、思わせてくれる内容です。
歴史に興味のあるお子さんなら、小学校高学年くらいから、中学生・高校生くらいのお子さんたちには特におすすめなシリーズです。
自分たちとそう変わらない年頃の登場人物たちが、物語の中でどんな恋をして、どんな風に生きて、散っていいってしまったのか……。
ぜひ読んでみてください。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子20歳、女の子16歳)
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