
魔法三部作の完結編
前作で本の世界に入り込んだ登場人物たちが、 それぞれの思いや願い、野望に従ってますます複雑に絡み合い、 物語を盛り上げていく。意外な展開と丁寧な人物描写で 今回も読者はぐんぐん引きこまれる!

ドイツを代表する児童文学会の作家フンケの【魔法の…】シリーズの完結編だそうです。
とても分厚い最終巻でした。
元々他の巻もページ数の多い作品でしたが、最終巻はこれに輪をかけてまたすごく重かったです。
すごくドイツ的というかフンケ的なラストだなと、思ったのが、新しい命がとても不思議な形で生まれてきたことです。
もしかしたら、フンケは、この新しい命を主人公に、別の角度から見たこの物語の続編を考え始めているんじゃないかななぁと、思いました。
『トムは真夜中の庭で』、『時の旅人』など、主人公の子どもたちが自分や自分の住んでいる場所にかかわりのある時間や空間を超えて異世界へ行く物語や、
ミヒャエル江・エンデの『はてしない物語』などのように自分が知っている(持っている)本の世界に行く話も、割とヨーロッパの児童文学作品としては王道ですが、
この【魔法の…】シリーズには、
筒井康孝さんの【残像に口紅を】で描いている世界と似たものを感じました。
虚構と現実、本に書かれている世界の中の虚構。またその現実。
上手く言えませんが、フンケはこの作品で、ただ時間や空間を飛ぶ物語ではなく、「現実と虚構の境目、もしくはそのふたつの交差するところの」ものを表現したかったのではないかと、私的には想像しています。
この物語には実に多くのキャラクターが存在するので、1人1人を覚えるのがとても大変でした。
名前が似ている印象のキャラクターもいて、途中で混乱してしまったり…。
ともかくとても、王道のファンタジーなので、ファンタジー好きなお子さんたちにはぜひ、一読してもらいたいです。
小学校高学年くらいから、中・高校生くらいの子どもたちにお薦めします。
(てんぐざるさん 40代・ママ 女の子18歳、女の子13歳)
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