表紙の「ねこのせんちょう」を見ただけで圧倒される。
身体も大きいし、毛づやも良さそうだ。両手は手袋をはめたように真っ白だ。そして「ねこのせんちょう」に圧倒されしまう一番の理由は、顔つきにある。何かを厳しい緑色の目で見つめている。その姿はりりしい。
なぜ「ねこのせんちょう」とよばれているのか、それは、毎晩、ボートに乗り、オールをこぎ、恋人の家にむかうからだ。
ボートの上で片寄せあう二人の姿にはドキドキさせられる。おそらく、子どもには仲良くしているんだね、で終わる場面だと思う。
しかし、このときの「せんちょう」の目には、いつものような鋭さはない。ただひたすら、目を丸くして、彼女をやさしく見つめているのである。
裏表紙の絵は、「せんちょう」がボートをこいでいる姿である。遠くに太陽が見えるので、彼女のところから戻ってきたところなのだろう。しあわせなきもちが「せんちょう」の後ろから感じられるような気がする。
私の知人お家にも「ねこのせんちょう」に似たねこががいる。完全な家ねこなのだが、もしかすると同居人の人間に気づかれないよう、夜にこっそりでかけているのかもしれない、と思った。