伝説だからといって、ものの哀れというよりも妙にむなしさの残るお話でした。
山伏の安珍と宿を借りた真砂の里の清姫の出会いは何だったのでしょうか。
二人とも悪意、邪心があるわけではないのではないのに、悲しすぎるというかあまりにむごい結末に続きます。
清姫の一途な恋心を感じつつ、二人のためを思って嘘をついた安珍。
それを保身というのは当たらない。
13歳という清姫の一途さは自分本位かもしれないけれど、それだけ純粋なのです。
それだけ純粋な思いが、ふとしたことから恐ろしい怨念に変わっていく様は、若者たちの破滅的な行動につながるようにも思います。
司修さんの絵が、おどろおどろしく思い入れたっぷりで怖さと怨念の奥深さとを一段と強くしています。
読み聞かせするには少し怖いお話です。
あとがきにあるこの話の謂れと実在する道成寺や史跡の解説をしながら、客観的にこの話を受け止めてもらえるよう考えました。