江戸時代、日本橋室町にある呉服屋「越後屋」で働く配送担当者が、仕事中に商品を盗まれた。主人から嘘つき呼ばわりされ、弁償できないために自殺を考えていたが、親友に助けられ…
江戸時代の裁判の仕組みや、犯罪の取り締まり・刑罰などを知らなくても、語り部が適当に説明してくれるので安心。
真面目に働いている労働者が、理不尽な扱いを受けるあたりは、現代と同じ。パワハラという言葉は当時はなかったが。
勤務態度が極めて真面目な従業員を理解できなかった経営者は、見る目がなかったのか、それともここには描かれていないがそうとう嫌な目に遭ってきたのか…
描かれていない部分にも思いをめぐらしてしまう。
お地蔵さんが、実にいい仕事をしている。おそらく仏教界で最強なのはお地蔵さんだ、と個人的に思う。基本的にどこでもいるし、なんでもする。この話のように、身代わりにもなる。冤罪も引き受ける。人前で恥をかくのも平気だ。
なかなか人情味の溢れる、そしてとんちの効いた物語だ。
あまり書くとネタバレになるので、このへんで。
後は本書を読んでください。
巻末には実在した人物「大岡越前守忠相」と、しばられ地蔵が実際に祀られている「南蔵院」(東京都葛飾区)の解説もあり。
ためになる絵本だ。
余談だが、70年代からテレビ放送されていた「大岡越前」をご存知の方は、是非ともテーマ曲を思い出してから、ページを開いて欲しい。
2019年発行の大岡越前は、どんなテーマ曲が似合うだろうか?