矢野顕子さんの大ファンの私が、「矢野さんが絵本の翻訳をした!」と聞いて書店にいったのはいつだったでしょう。まだ学生だった私は、ミーハーまるだしで、ちっとも「絵本とはなにか」が分かっていませんでした。もちろん、子どもの頃には絵本を沢山読んでいましたが、本当の絵本の良さ、は自分が子どもを持つまでわかりませんでした。
息子が生まれ、手持ちの絵本が少なかった頃、本棚にあるハーヴィーを出してきて一緒に読んでみました。するとどうでしょう、1歳くらいのころだったと思いますが、片言で、「葉っぱ、パパさん、チュンチュン」などと自分が知っている言葉で表せるものを指差したり、私の手を持って、指差しさせて「これはなに?」と聞いてくるのです。その後も何度も読み、大分言葉も発達してきましたが、「車いるねぇ〜」「飛行機どぉーん」といろいろ気づいたことを教えてくれるのです。こどもはストーリーを追うだけではなく、細かい絵の端々まで目をやり、絵本を丸呑みにするくらい楽しむのだということを教えてくれたのです。
「しょうぼうていハーヴィー、ニューヨークをまもる」は大人のための、9.11を考える絵本とも言えるかもしれませんが、わたしにとっては絵本のすばらしさをこどもを通して教えてくれた大事な一冊なのです。