自分たちが何不思議なく日ごろ口にしている肉。
その肉がどのように精肉されているか、森さんはそのことを伝えながら、どうして知ろうとしないのか、とても奥深いことを教えてくれました。
自分たちが日ごろ口にしているのは命なのです。
決して工場で生産されているわけではない。
命を奪うことの営みと、命を食べることの営みを結び付けて、何が大切なんだろうと語りかけます。
動物愛護と肉を食べていることの矛盾をどのように乗り越えるか、森さんなりの優しさで語っています。
精肉業者は殺し屋ではなく、人々が必要としている肉を作るために働いている人たち。
蔑まれる人たちではなく、自分たちのために働いているのだとも語りかけます。
精肉の話から、話は差別問題に変わりました。
かつて、精肉で働く人たちは差別され、忌み嫌われる存在でした。
部落問題、非人、穢多…、レッテルを張ることで社会的に苦しめてきました。
でもかつては河原乞食といわれた芸能者は、いまではアイドルであったりスターであったり、とても高い評価を得られるようになってきているではないか。
みんなが平等だと学ぶ子どもたちに、大人たちが犯してきた過ちを素直に語っています。
いつの間にかとても大きな問題提起となってしまいました。
森さんはこうも言っています。
「自分で見ることが必要だ。事実は語られるところから、語る人のフィルターを通したものとなるのだ。」
素晴らしい言葉です。
奥深いから、人々は知ろうとしないのでしょうか?
この本を読んで、思い切り反省させられた私でした。