わが子と同じ年頃の若武者の首を切り落とす。
そんな不条理で残酷なお話ですが、平家物語の一ノ谷の合戦の逸話として切なさとやるせなさが、描かれていて、美しくも感じました。
戦の前に、若冠十六歳の若武者平敦盛の奏でた笛の音に心打たれた熊谷次郎直実でしたが、その若武者を切らねばならなくなった時、正に諸行無常の境地に立たされます。
逃がしてくれようとする情けに、武将の意地とて自分の首を差し出す敦盛のいさぎよさ。
言い様のない虚しさに胸がいっぱいになりました。
「戦いとは何か。人を殺すことが手柄なのか。…。武士とはいったいなんなのか。」
直実の自問自答のシーンがとても気高く感じました。