桜の木の一年を追った絵本です。桜の花が散ると毎年「終わった」「淋しい」という感情が湧くのですが、この絵本は、時の流れはすべて、「新たなるものとの はじめまして」という捉え方をしています。春、桜の花が咲くと、ミツバチ、シジュウカラの子たちが「はじめまして」。散るときは風と「はじめまして」。実が生り「はじめまして」。葉が散り、大地と「はじめまして」。寒くなると、雪が「はじめまして」。
作者は『かまきりっこ』や『つちらんど』の近藤薫美子さん。実は今まで、近藤さんの絵は苦手でした。虫がぎっしり描かれた画面が力作だと分かっていても、一匹一匹描き分けられた絵が巧みだと分かっていても、作者の「虫が好き!」という気持ちが伝わってはきても、どうも受け付けませんでした。でもこの絵本ではまず、豊かで心なごむ自然の美しさに惹かれ、その上で、虫や生き物の可愛さがすっと伝わってきました。虫たちがとてもお茶目です。シンプルでやさしい言葉遣いの文章も素敵だと思います。