新美南吉の童話集で、5つの短編が入っています。
4編は、どれも他愛もないお話ですが、とてもほのぼのしていて、春の陽だまりのようなお話です。
木や花や虫や小動物が出てきて、自然の中でそれぞれが生きている楽しさのようなものを感じます。
最初の「がちょうのたんじょうび」は、必死におならを我慢するいたちと、その周りの動物達とのやりとりが楽しく、ちょっと情けない結末に口元が緩んでしまうお話です。
これは、小さいお子さんでも十分に楽しめるでしょう。
最後の「ひろったらっぱ」というお話は、ちょっと毛色が違っていて、戦争の影が見え隠れしていますが、それでも最後には野原一面に麦が実り、未来への希望が見えています。
新美南吉というと、『ごんぎつね』が頭に浮かび、なんとなく陰のある作品を書いているような印象がありましたが、この本は、それを一蹴する明るくほわほわした本でした。