この絵本は、「情熱大陸」という番組の密着取材を受けながら制作されたということです。
昨年、爆発的に売り上げた『ママがおばけになっちゃった』があったので、取り上げられたのでしょう。
『ママおば・・・』は賛否両論。ファンの方々には「ママの承認欲求を満たす絵本」として、「感動する絵本」、「泣ける絵本」として高い評価を得たようですが、子どもと本について長く活動を続けてきた視点からみると、問題の多い作品だったと思います。そのことはそちらの絵本のレビューに書きました。
そしてこちらの作品。『ママおば』が死を軽視した絵本だという批判があったためか、その反論として「生命の大切さを訴える渾身の作」ということですが、読んでみてどこが生命の尊厳を伝えているのだろうと思ってしまいます。ことばで無理やり感動させようとする意図がありありで、逆に冷めてしまいます。
インタビュー記事を読んでも、そのあたりのことは理解できません。
どうして冷めてしまうかというのは、ご本人がインタビューで答えている、”重いテーマを伝えたい時は最初は思いっきり面白く描く”という点です。でも、大切なことはストレートに表現したほうが絶対に子どもには伝わります。
またチューリップのプーが植えられている場所が一体どこなのか、最初のページでは庭のように見えるし、途中でベランダのようにも見える、そしてそのベランダが狭い突き出したバルコニーのようにも描かれていて、絵の稚拙さにもテーマとのギャップを感じます。縁台の高さも描かれ方も不安定で、気になるのですが・・・
そういうことを含めても子どもをナメた絵本だと思います。子ども向けだからこそ、写実的でなくてもいいから、せめて一貫した統一性が絵に欲しいと思います。