赤羽さんの最期の作品がこの宮澤賢治作品でした。
この本の作品リストには、近刊として宮澤賢治作品が4つ上げられていたので、この後も宮澤賢治作品を発表していくおつもりがあったことがわかります。
宮澤賢治の作品、今はかなり絵本化されていて、私も見つける都度読んでいるのですが、この作品はまだでした。
赤羽さんご自身、雪国に何度も足を運ばれて雪のスケッチやスライドをたくさんとられていたそうです。
この作品には雪嵐が出てきますが、自然の中で刻々と姿を変える雪の描きわけることができたのだなあと思います。
一郎と楢夫は家に帰る道で雪嵐に見舞われてしまうのです。
現実と鬼が出てくる黄泉の国のような現実とかけ離れた世界が登場します。
赤羽さんは鬼の赤羽と呼ばれて鬼を描く機会が多かったそうですが、処女作は『かさじぞう』で、
遺作となった『ひかりの素足』にも雪が出てきます。
雪で始まり雪で終わった画家人生だったのだと、読んでみて思いました。
一作一作渾身の思いで、心をこめて決して手を抜くことなく、作品に向きあった赤羽さんの最期の作品がこの作品だと思うと、感慨深いものがありました。
雪を扱った『つるにょうぼう』『水仙月の四日』『ゆきむすめ』など、雪だけを
見ながら雪の表情をたどってみるのも一興だと思います。