子供たちに俳句の魅力面白さを伝えるのも大層難しいだろうが、相手が外国の人ともなればその数倍は困難さがある。
この絵本は副題に「一茶の人生と俳句」とあるように江戸時代の俳人小林一茶の代表的な俳句33句を紹介しつつ、その生涯を描いたものだが、作者の名前を見ればわかるように、これはアメリカで出版された絵本である。
海外でも俳句を詠む人がいて、それを鑑賞する人も大勢いるとは聞いたことがあるが、こうして子供向けの絵本となってその魅力が描かれていることに驚いてしまう。
タイトルの『蛙となれよ冷し瓜』は一茶の「人来たら蛙となれよ冷し瓜」という句からとっている。
その英語訳が「Cool melons – turn to frogs! If people should come near.」である。
この絵本にはこの英語にも訳があって「やい、冷し瓜やい もしだれか来たら 蛙に化けろよ」となっている。
訳は児童文学に造詣の深い、脇明子さん。
日本の俳句と海外のそれはやはり印象がかなり違う。
言語が違うからそれは仕方がないが、俳句の洗練さはやはり見事というしかない。
この絵本は小林一茶の俳句を鑑賞するだけでなく、厳しい子供時代、そして晩年の幼き子や妻さえなくす辛い時代を簡潔に描いている。
文を書いたマシュー・ゴラブさんはアメリカで日本語を専攻し、日本に留学、その後数年日本で過ごした経験があるそうだ。
日本人でさえ、一茶の代表的な俳句は知っていても、その生涯ともなれば知らない人が多いだろう。
それをこういう絵本の形で、外国の人から教えられるのであるから、妙な感じがしないでもない。