新美南吉と黒井健の組み合わせというと『手ぶくろを買いに』と『ごんぎつね』。
しっとりとした絵本をイメージしていたのですが、この絵本はほのぼのと明るい絵本で、ちょっと意外感。
表題の『がちょうのたんじょうび』では、がちょうさんの誕生日をめぐって仲間たちのほほえましいやりとりが描かれています。
仲間に入れてあげたいけれど、いたちさんはみんなが嫌がる臭いおならをするくせがあります。
いたちさんを悲しませないように、おならをがまんすることをお願いして一緒に誕生会。
楽しく進んだパーティに中でいたちさんは倒れてしまいます。
おならをがまんしすぎたから…。
みんなはいたちさんを誘わなければ良かったという最後は意味深長です。
どうしてそんなことを考えたのかな?
いたちさんのため?
自分たちのため?
何が良かったのか考えさせられます。
もう一編の『こぞうさんのおきょう』。
短編ながら人間味のあるほほえましい作品です。
和尚さんの代わりに法要に出かけた小僧さん。
途中でウサギと遊んだばかりにお経を忘れてしまいます。
それでウサギに教わった歌をお経代わりに法要を済ませるのですが…。
それを受け入れる檀家の大人たちの優しさが心地よいです。
お土産にもらったおまんじゅうをウサギさんに分けてあげるところもほほえましいです。
この抱擁感がこのお話の素晴らしさ。
ゆったりと読むのに心地よい短編でした。