この本の作者宮西たつやさんは『おれはテイラノサウルスだ』や『おとうさんはウルトラマン』といった作品で人気の絵本作家です。その時は、みやにしたつやという名前で作品を発表しています。
絵本ですから、漢字が混ざると読めない子どももいるという配慮でしょうか。
この作品では、「みやにし」は「宮西」と漢字表記されています。絵本というより小学生低学年向きの児童書ですから、そうされたのではないかと思っていますが、ちがうかしら。
絵はみやにしたつやさんそのままですから、幼児の頃に親しんだ子どもたちが少し大きくなって、自分で読んでみたい、と思う時期にぴったりです。
その時期の子どもって、絵本は卒業したんだい、と主張したい年頃ですもの。
この物語の主人公はテイラノサウルスの子どもトロン。
偉大な父ゼスタとやさしい母セラの間に生まれた子ども恐竜です。
まだ幼い頃母セラは地震で崖の下に転落してしまいます。そして父ゼスタも群れの抗争でバルトという敵に倒されてしまいます。 でも、ゼスタが死んでしまったのには訳があります。そのことは物語の後半に明らかにされます。
一人残ったトロンは父の仇のバルトと闘いますが、敗れてしまいます。仕方ありません。トロンはまだまだ子どもですから。
なんとか一命を取り留めたトロンは何人かの友だちと出会い、さまざまな経験をしていきます。
そして、元の場所に戻っていくのです。もちろん、バルトと闘うために。
でも、トロンはすっかり大人になっていました。
トロンはいつしか偉大な父ゼスタとそっくりになっていたのです。
物語ですから、起承転結のうまい運びになっています。どこまでは物語の始まりで、何が起こって、どういう展開になるのか、そして最後はどうなのか、とてもわかりやすい構成になっています。
どんなクライマックスが待っているでしょうか。
こういう物語を読んで、子どもたちは物語の進み方を学んでいくのでしょうが、まず何よりもわくわくすることが大事。
さあ、あなたもトロンと一緒に冒険の旅へ。