セピア色の絵、歯医者のビボットさんの絶妙な表情、絵の構図、映画のような感覚で読みました。
神経質なビボットさん。犬のマルセルを飼っていながら愛着がない。人に思いやりもあまりない。
おばあさんの歯を抜いておきながら(治療だけど)、お金がないとわかると薬も渡さず追い出してしまう。
個性的で憎まれ役に徹しているビボットさんですが、それだからこの絵本が面白い。
おばあさんが治療代の代わりにとビボットさんに渡したのが、夢が正夢になるといういちじく。
ビボットさんの夢は奇想天外(夢ってそういうものかもしれないけど)。
なぜ、下着のままで散歩に出かけたのだろう。
本当に夢がかなういちじくだとわかって、ビボットさんは大金持ちになる夢を見ようと自分に催眠術をかけようとします。
本当に大金持ちになる夢を見られるようになるのだから面白い。
そして、さあ食べるぞと思った時にマルセルが食べてしまう。
すこし予測できたのですが、ラストが面白い。
正夢になったのはマルセルの夢でしょうか。ビボットさんの夢でしょうか。
何とも不思議で、説得力のある絵本。
オールズバーグの絵本は、イリュージョンの世界のようで終わってもキツネにつままれたような作品が多いような気がするのですが、この「まさ夢いちじく」は納得です。