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クマと少年」 パパの声

クマと少年 作:あべ 弘士
出版社:ブロンズ新社 ブロンズ新社の特集ページがあります!
税込価格:\1,650
発行日:2018年05月25日
ISBN:9784893096319
評価スコア 4.5
評価ランキング 8,110
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  •  今年(2018年)、北海道と命名されて150年にあたります。
     もともと「蝦夷地」と呼ばれていたそうですが、明治という新しい時代を迎えるに際して新しい名前を付けることになります。
     そこで探検家松浦武四郎が「北加伊道」を含むいくつかの案を出し、そこから「北海道」と付けられることになったそうです。
     名前のもつ雄大さは北の大地にぴったり合っています。
     松浦は現在の三重県に生まれていますが、探検家ということで北海道まで足を伸ばして、実際自分の感覚として、この名前がひらめいたのでしょうか。

     北海道には自然だけでなく、アイヌの人々の暮らしと歴史が息づいていました。
     先住民であるアイヌの人々からすると、虐げられた歴史もあるでしょうが、共存していくためには先住民への尊敬が必要でしょう。
     それはさまざまな場面で芽ぶき、大きな木となって、今に至っているのではないかと思います。
     北海道の旭川で生まれ、地元の旭山動物園で働き、そして動物の生態をきちんと描く絵本作家となったあべ弘士さんのこの絵本も、そんな成果のひとつです。

     アイヌの伝説は小さなヒグマの子と少年の、友情というよりは、兄弟愛のような世界を描いています。
     本当であればイオマンテの夜に神に捧げられるはずであった小熊がひょんなことで森に帰ってしまう。やがて成長した少年はヒグマを神に返すべき、山深く入ってこのクマをさがすことになる。
     さだめられて運命のもと、大きく成長した少年は愛するヒグマに矢を放つ。
     自然とそこに生きた人々と、そして今の私たち。
     あべさんのこの絵本は北海道の大地のように、深い。

    投稿日:2018/08/26

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  • イオマンテ

    子熊を育てて、大きくなったクマを神の国に帰すというイオマンテの儀式は、アイヌの人でなくては解らない世界なのでしょう。
    兄弟のようにして育ったキムルンを殺して食べるなんて、どうしても神聖な儀式と食肉が頭の中で対立してしまいます。
    山に去った(逃げたのではなく)キムルンに、神の国に帰れなくなったと思う少年の気持ちは複雑です。
    成長した同士の再会で、少年に射って欲しいと思うキムルンの気持ちも美意識に尽きるような気がします。
    最後の幻想的なシーンをどの様にとらえるかで、話が違ってしまうのですが、あべさんは判断を読者に委ねたのでしょうか。
    解説も味わい深いものでした。

    投稿日:2018/06/27

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