絵本作家かこさとし(加古里子)さんは亡くなる直前の今年(2018年)3月から4月にかけておよそ一ヶ月間、NHKの取材を受けていました。
その姿が「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、先日放映されました。
タイトルが「ただ、こどもたちのために かこさとし 最後の記録」。
まさに「こどもたちのために」終生、絵本を描き続けた人かこさんの姿がカメラにおさめられた貴重な記録映像でした。
番組の最後に使われたのが、1995年に刊行されたかこさんの科学絵本シリーズの一冊であるこの本でした。(この絵本の執筆では加古里子という漢字表記を使っています)
この絵本はかこさんの人気シリーズである「だるまちゃん」や「からすのパンやさん」とは一味も二味も違います。
どちらかといえば、デビュー作である『だむのおじさんたち』(1959年)に近いものです。
タイトル『人間』とあるとおり、宇宙の誕生から地球の成り立ち、その小さな星に生き物が生まれ、やがて私たち「人間」が誕生する、壮大な世界観がまず描かれます。
その次には子供がどのように誕生して成長するのか、ここでは性教育のような描かれ方をしています。
この単元でかこさんはかつて子どもが自分が母親のどこから生まれたかわからないという疑問に答える形で、ていねいに綴られています。
こういうあたりが、「こどもたちのために」描いたかこさんらしい一面です。
そして、人間の身体の成り立ち、人間の歴史とつながっていきます。
かこさんはこの絵本を制作するにあたって10年以上の歳月を有しました。
それだけ強い思いが結実した絵本だといえます。