2005年に公開された「ALWAYS 三丁目の夕日」は、東京タワーのできる前の昭和33年(1958年)の東京下町を舞台した映画で大人気となりました。その後、続編、そのまた続編が作られたぐらいです。
同時に、昭和30年が俄然注目を集めました。
その要因として考えられるのはやはり団塊の世代の人たちでしょう。
団塊の世代というのは終戦後まもない昭和22年(1947年)から昭和24年(1949年)にかけて生まれた人たちを指すます。
映画が公開された2005年、団塊の世代は定年直前でした。おそらく彼らの目には自分たちが作り出してきた日本の社会の原点が昭和33年のあたりだったのでしょう。その頃団塊の世代は11歳。
フランスのこの絵本もよく似た構造です。
主人公は1945年生まれのアラン少年。舞台は1953年ですから、「ALWAYS 三丁目の夕日」よりは少し前になります。
まだテレビはほとんど普及していませんでした。
フランスの少年少女はこの当時どんな生活を営んでいたのでしょう。
この絵本では家での生活、町の様子、学校でのことなどが丁寧に詳細に描かれています。
夏になればまだ冷蔵庫はありませんから「氷蔵庫」が使われます。これは大きな氷をいれて冷やします。これは昭和30年代の日本でも使われていました。
男の子の遊びと女の子の遊びは違います。このあたりも日本とよく似ています。
映画が娯楽の王様だったのも同じです。
日本では昭和33年(1958年)に映画観客人数がピークを迎えています。
そして、子どもたちは戦争ごっこが大好きでした。
昭和30年代の日本もそうです。戦争が終わってまだ10年ばかりだというのに、戦争映画や戦争漫画が多く作られましたし、遊園地のイベントに戦車が展示されたりしました。
ただ日本の子どもがフランスと違うのは、紙芝居でしょうか。
この絵本には紙芝居は出てきません。
アラン少年はある夜こんなふうに思います。
「ぼくは、なにになるんだろう?」「この世界はどんなふうにかわっているだろう?」
テレビがなかった頃、子どもたちはたくさん夢(未来)を見ていました。