絵本というのは、実に不思議です。
例えるとしたら、ドラえもんのポケットがいいかもしれません。
何しろ、どんな世界も絵本になるのですから。
なので、絵本を小さい子供の読むものとしてしまうのはあまりにももったいない。
できれば、大人の人にも読んでもらいたい。
絵本作家の川端誠さんのこの作品は「落語絵本」と銘打っているように、落語の世界を絵本にしたもので、川端さんは「落語絵本」の草分けとしてこれまでにも多くの落語を絵本にしてきました。
2023年10月に出た『井戸の茶わん』は、従来の「落語絵本」は24ページだったのを今回32ページとページ数を増やしたといいます。
それによって、長い落語噺を絵本作品として表現できたと、川端さんは語っています。
「井戸の茶わん」という落語は、貧乏暮らしの浪人が手元の仏像を屑やに預けるところから始まる人情噺。
この仏像を買い取ったのは細川家のつとめるりっぱな武士。
埃まみれの仏像を磨いていると、なんと中から50両もの小判が出てきます。
屑やを探し出し、元の持ち主に返そうとしますが、元の持ち主も頑固でなかなか受け取らない。そんなやりとりが、以降、正直な屑やをはさんで何度も繰り返されます。
この噺について、春風亭柳朝さんは「こういう噺は欲を出さず、あっさり演ること」と語っているが、川端さんの絵もその「あっさり」感がうまくでていて、笑わせてくれます。
もう名人芸。