『星新一ショートショートセレクション9』(理論社)。
表題作である「さもないと」をはじめとして、16篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
タイトルにもなっている「さもないと」は、漢字で書くと「然もないと」。
意味は「そうでなければ」で、時代劇なんかで、例えば「正直に申せ、さもないと斬るぞ」みたいに使われることがあるが、実際自分で口にすることはない。
これをタイトルにした作品も時代劇で、貧しい木こりの青年が不思議な老人の言葉を信じてどんどん出世していくお話。老人が言い残した「約束を守れ、さもないと…」の言葉を忠実に守ったおかげで、子孫まで繁栄していく、大河小説。(といってもショートショートですが)
星新一さんの作品はロボットとか宇宙船とか異星人とかSFものが多いという印象がありますが、この「さもないと」のような時代ものも結構あって、この巻ではほかにも土地に伝わるのろいを描いた「音色」もキツネを妻にもった男の話「領主の館」なども時代ものだ。
時代ものとなるとSFとは違い、ほのぼの感が増して、昔話のような感じがします。
それにそんな作品に和田誠さんのイラストがよく似合うのです。