なんだか切ない話です。
自分の思い出さがし、夢物語、ポエム…、なんともピッタリする表現が見つからないのです。
主人公には産んでくれたお母さんと2番目のお母さんがいました。
2番目のお母さんも死んでしまいました。
お父さんも亡くなっています。
バスで出かける主人公。
橋のない谷の向こうの社宅。
象徴のように思い出す水蒸気と煙突、キツネ。
走馬灯のような思い出の展開の中で、谷には橋が渡り、目的地にたどりつきました。
一番目のお母さんにやっと会えました。
印象的な夢だったけれど、それ以来同じ夢を見なくなった主人公。
子供向けには難しいようにも思いますが、私にとってはとても味わいのある懐かしい会期願望の作品です。
自分ならばどのように思い出を描くだろうと思ったとき、せめて息子には語りたい絵本だと感じました。
モノクロームから色彩への変化。
太筆で力強く描かれた風景。
詩のようなこの話に、中野真典さんの絵が素晴らしくマッチしています。