さらっと読めて、随所に笑いもあり、幼年童話の入門編としてぴったりの作品です。
おサルだらけの南の島で、一匹のおサルに突然悲劇が起こりました。カニがおサルの耳をはさんで離れなくなったんです。他のおサルはなんともありません。何で自分だけ‥と悲観的になったおサルの妄想がエスカレートしていくところが面白いんです。
困ったところにおじいさんザルがやって来て、昔おじいさんも同じようなことがあったと話してくれます。更には、おじいさんのおじいさんも‥と展開になったあたりで、長谷川義史さんの「おじいさんのおじいさんのおじい‥」が頭をかすめました。またヒイヒイ言わされちゃうのかと。
無事めでたしで終わってくれてホッとしました。おサルも“自分だけじゃなかったんだ”と安堵し、それに“他人と違っていてもいいんだ”と気がついたようです。おチャラけた感じの作品ですが、意外と深いテーマが隠されているようでした。
息子は、話しの途中でカットインする意味不明なおサルの顔が面白かったようです。3段階に増殖するおサルの顔に「サルです」「サルです。」「サルです!」と読んであげるととてもウケておりました。
挿絵が特に規則性がなくカラーだったり、白黒だったりするのが気になりましたが、あまり深く考えちゃいけないという作者のメッセージなのかもしれませんね。赤塚不二夫さんの「これでいいのだ!」というような。
僕はこの作品を読んでから、時折息子の耳をつまんでは「かに。」と言って遊んでいましたが、最近飽きてきたのか、気にしなければ離れると心得ているのか反応してくれなくなったのがちょっと寂しいです。今日はタコでいってみようかな‥違うかっ。