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魔法のホウキ」 パパの声

魔法のホウキ 作・絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ
訳:村上 春樹
出版社:河出書房新社
税込価格:\2,200
発行日:1993年
ISBN:9784309261874
評価スコア 4.81
評価ランキング 303
みんなの声 総数 20
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  •  村上春樹さんは絵本の翻訳もたくさんしていて、それはそれで春樹研究の一単元になるのではないかというくらい。
     村上さんの絵本の研究がなされたからといって、例えば彼の長編小説の構成のありかたとか文章の成り立ちとかがわかるかといえば、それはどうでしょう。
     むしろ、村上さんは長編小説の合間あいまに絵本の翻訳をしながら、音符で言えば休符記号みたいに、絵本の翻訳を楽しんでしるのではないかと考えているのですが。
     だって、絵本というのは文章が少なくて、翻訳といっても、けっこう短時間にできるのではないでしょうか。あとはゆっくり言葉を丁寧に育てたり、刈り取ったり。

     さらにいえば村上春樹さんにはお気に入りの絵本作家があって、その一人がこの絵本の作者C・V・オールズバーグです。
     オールズバーグの作品は何冊も翻訳しています。
     きっと春樹研究者だったら、そのあたりから、村上文学の特長とかをもっともらしい文章で綴るのでしょうが、私はもちろん春樹研究者でもないので、その理由はわかりません。
     ここからはなんとなくですが、村上さんはオールズバーグの文章もさることながら、彼の絵がお気に入りではないかしらん。
     村上さんといえば、その作品性だけでなく、コンビを組んだ多くの、といっても無条件にその嗜好が広がることはありません、イラストレーターといい関係を築いてきた、日本でも稀有な作家の一人といっていいでしょう。
     まじめな春樹研究家だと、「村上春樹とイラストレーターの親密な関係」ぐらいの論文を書いてしまいそうです。
     その研究をまつまでもなく、村上さんは絵をとても楽しんできた作家といえます。

     オールズバーグの絵の魅力といったら。
     この作品はモノクロームですが、細部に神が宿る、といってもいいくらい、ページの端から端まで神経が行き届いています。
     魔女が主人公の後家(! この言葉をどうして村上さんが使ったのかも謎です。春樹研究者であれば・・・)に置いていった「魔法のホウキ」の、なんと生き生きしていることでしょう。
     まさか村上さんが「魔法のホウキ」を欲しがったということはないと思いますが、これも春樹研究者の今後の研究結果にゆだねたいと思います。

    投稿日:2014/08/17

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  • 珍しくまっとうなオールズバーグさん

    未亡人の家に魔女が置いて行った魔法のホウキ。
    助けてもらったお礼なのだろうか、忘れ物なのだろうか?
    しかし、オールズバーグの絵本のいじわるさや、どんでん返しに鍛えられた私が最後まで期待した(?)展開はなく、とってもアットホームなお話でした。
    未亡人と魔法のホウキは心(?)通い合わせることが出来ました。
    近所のやかましやたちが去っても、自分たちで仲良く暮らしていきます。
    この展開は読めなかった。
    魔女の再登場や、ホウキの逆襲、未亡人が正体を現すなどと深読みはせず、微笑ましいお話として受け取りました。
    せっかく内容がまろやかなのだから、絵の手法も変えてくれると安心できたのになどと思うのは、オールズバーグ作品の読み過ぎでしょうか。

    投稿日:2010/09/10

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  • 素晴らしいファンタジー

    • ジュンイチさん
    • 40代
    • パパ
    • 東京都
    • 男の子12歳、男の子6歳

    魔法のホウキが、水を汲んだり掃除したりして働くと言うのはディズニー映画の「ファンタジア」で見たのと同じです。
    「ファンタジア」は、1940年の映画で8つの作品から成立していました。
    その中の一つが「魔法使いの弟子」で、ミッキーマウス演じる魔法使いの弟子が、勝手に魔法のホウキを使い、水汲みをホウキにさせるものの、止め方の呪文が分からず大洪水になるというものでした。
    どこか、ファンタジアに原点があるような作品ですが、趣は全く違いました。

    この作品のホウキは、未亡人のミンナ・ショウと仲良く暮らします。
    でも、隣人達は、悪魔のしわざと決めつけて、ホウキを燃やしてしまうのです。
    最後の大どんでん返しは、読んでのお楽しみですが、いつものオールズバーグの底知れぬ余韻ではなくて、ほっとした気持ちが残りました。

    絵のサイズといい、セピア色の色調といい、計算され尽くした秀逸な作品だと思います。
    壮大なファンタジーという訳ではありませんが、味わいのある作品で、オールズバーグの入門にも良いかも知れません。

    投稿日:2008/03/01

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