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ハリス・バーディックの謎」 パパの声

ハリス・バーディックの謎 作・絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ
訳:村上 春樹
出版社:河出書房新社
税込価格:\1,760
発行日:2015年07月
ISBN:9784309276205
評価スコア 4.23
評価ランキング 23,610
みんなの声 総数 12
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  • 物語は読者の手の中にある。

     物語はひとつのきっかけから始まる。
     一本の電話。食べかけのスープ。開きかけた扉。風に揺らめく灯り。
     そこから何百何千何万文字の物語が始まる。
     C.V.オールズバーグのこの絵本を読むと、そのことがよくわかる。
     ここにある14枚の絵と題名、そして短すぎる説明文は、読むものに物語を予感させる。
     ここから始まる。
     そして、その物語はすべてあなたの物語だ。

     14枚の絵は、30年前に出版社に預けられたものだという。
     持ち込んだのは、ハリス・バーディックという男。
     そんなことが本の「はじめに」で書かれている。
     ここからすでにC.V.オールズバーグの魔法が始まっている。彼の物語に誘われたといっていい。
     そして、1枚めの絵。
     ベッドで眠っている男の子。開いた窓からいくつかの光がはいってきている。
     付けられた題名が「天才少年。アーチー・スミス」。
     短い説明文はこうだ。「小さな声が言った。「あの子がそうなのかい?」」
     さあ、あなたならどんな物語を紡ぎだすだろう。
     続く、2枚めの絵。
     ぽっこり膨れた絨毯に向かって、椅子を振り上げている頭髪の薄くなった男性。
     付けられた題名が「絨毯の下に」。
     「二週間後にまたそれが起こった。」と説明文がある。
     果たして絨毯の中には何かいるのだろうか。読者の想像を掻き立てる。
     3枚めの絵は、水辺の少年と少女が描かれている。きらきらと水面に光が跳ねて。
     題名は「七月の奇妙な日」、これだけでも十分ミステリアスだが、「彼は思い切り投げた。でもみっつめの石は跳ねながら戻ってきた。」なんて書かれると、一体このあと何が起こるのか気にかかる。
     いや、物語は読者の手の中にある。
     このあと、少年と少女に何が起こるのか、すべては読者に委ねられている。

     だが、生きていくということは、C.V.オールズバーグのこの絵本に似ていないだろうか。
     日々のちょっとしたことが物事を動かしていく。
     そして、それがその人の物語を作っていく。
     そんなことを教えてくれる、素敵な絵本だ、この本は。

    投稿日:2014/09/28

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  • これは反則技です

    オールズバーグの絵本だからあえて言うのですが、これは反則です。
    オールズバーグの絵本の世界は不思議がいっぱいで、どれを見ても唸ってしまうのですが、この絵本(画集)は14枚の絵にテーマと意味深い文章を添えて、読者に想像することを課題としているのです。
    しかも、それぞれが深いひだのある物語に思えるのです。
    オールズバーグには、多分自分でイメージしている作品構想があるのです。
    もしくは、イメージしながら何らかの理由で作業を止めてしまったのです。
    この絵本にある14の扉はどれを開けてもオールズバーグなのです。
    何度見てもうなってしまうのですが、この絵本のどこを見ても模範回答は見つかりませんでした。
    すこしズルイです。

    投稿日:2010/09/10

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  • 絵本というより画集

    • ジュンイチさん
    • 40代
    • パパ
    • 東京都
    • 男の子12歳、男の子6歳

    この作品は、絵本というより画集と言った方が相応しいかも知れません。
    14枚の絵にタイトルと注釈がついているだけで、ストーリーの展開は読者に委ねられているのです。
    想像力を駆使して、絵のなかに潜んだ物語を空想するのは、この上ない楽しみを読み手に与えてくれることでしょう。

    オールズバーグのパステル画で描かれたモノクロの世界が、読者を魅了してやまないと思います。
    是非、想像力を豊かにして、そこに封じ込められた物語を堪能して欲しい一冊です。

    投稿日:2008/03/09

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