作・絵 ホリー・ホビー、訳 二宮由紀子とくれば、誰しもが知っている「トゥートとパドル」シリーズです。
そのホリー・ホビーの2010年の彼女の自伝的作品です。
「トゥートとパドル」シリーズを読んだときに、その原点を見出すことができて、さらにシリーズが楽しめること間違いありません。
物語は、私が祖母の家の3階で暮らす都会のシーンで幕開きです。
近所には沢山の子供がいて、どの家もぎゅうぎゅうに暮らしている、とても賑やかな生活がそこにはありました。
それが、突然、両親が古い農場を買い、田舎暮らしを始めることになります。
私は、直ぐ森や野原が好きになり、動物の世話に夢中になるのです。
その時憧れたのが、乗馬。
私は、世界中の何よりも、馬が欲しかったのです。
その憧憬は、馬のいる生活を空想させ、馬の絵をそれこそ沢山描くことに繋がるのですが、まさに彼女が絵本作家となる原点が、そこにはあるのです。
馬を飼うことに家族から反対されるのですが、私は諦めきれない。
私の誕生日、両親が納屋にプレゼントがあると言われた時の、期待に満ちた私の気持ちは想像に難くありません。
誰しもが馬のプレゼントと思うのですが、それは馬ではありませんでした。
私の想いを、可能な限り受けとめた両親の行為に拍手したい気持ちに駆られます。
同時に、馬でなかったことをガッカリするのでなく、感謝の気持ちに変えていく私にも、拍手したい、そんな素敵なエピソードだと思います。
「トゥートとパドル」を読む上で貴重な作品ですが、1つの作品としてもオススメです。
特に、起承転結のしっかりとした構成が優れた作品だと思います。
読み聞かせよりは、小学校低学年以上のお子さんが、自分で読むのに適しているかも知れません。